店主の林直です。
先日のブログでもお知らせしておりますが、ただいま私の個展が開催中です。今回は「きおくの記録」と題したモノクロ写真のシリーズを展示しています。
今回のメインイメージとも言える地球儀の写真の撮影シーンは、以前こちらのブログでもご紹介しました。
夜のスタジオその後、現像を終えたフィルムから大伸ばしプリントしたものを展示して、展示に漕ぎつけています。せっかくですので、どのように作品が仕上がっていくかをご紹介しようと思います。
今回、この地球儀の作品プリントのサイズは全倍というもので、イメージだけでも約75×60センチを超えます。ロールに巻かれた印画紙を必要なサイズにカットしてプリントするので、作業する暗室もそれなりの広さを必要とします。
まずは引伸機にネガをセットし、サイズとピントを合わせます。真ん中に置いてある黒いものはフォーカススコープと言い、写真の粒子にピントを合わせる拡大鏡です。
短冊に切った印画紙にイメージの一部をプリントして、全体の調子を想像します。少しずつデータを変えて自分の理想に近づけていきます。今回は3回のテストをしました。
プリントサイズが大きくなると、それを処理するためのバット(皿)も大きくなります。
引伸機でネガを通した光を受けた印画紙は、その強弱により印画紙に塗られた銀が反応し、写真の画像を作り出します。但し、光を当てただけでは何の変化も見られず、ただの白い紙です。この状態を潜像(せんぞう)と呼び、次にアルカリ性の薬品に浸すことで現像(げんぞう)されます。現像という言葉はよく聞くことがあると思いますが、その反対語が潜像というわけです。
上の写真の奥のほうに見えるのが引伸機です。この写真だと小さく見えますがめちゃくちゃ大きい引伸機です。
この大きさのプリントはやはり圧倒的な存在感があります。処理をしていても、からだ全体を使って作り出すことになるので、とても楽しいものです。もちろん失敗したら貴重な印画紙をゴミ箱に捨てることになるので、緊張感も隣り合わせですが。
水洗ののち、薬品による印画紙の保存処理(経年変化のない状態)をして、水洗した印画紙をこのように吊るして自然乾燥します。なかなかの迫力です。
後日、きれいに乾燥した印画紙を、すみずみまでチェックしたあと、台紙に貼り付ける作業をします。これはドライマウントプレス機という、アイロンの親分のようなもので、熱で溶けるシート状のノリで全面を台紙に貼り付けします。プレス機を上回るサイズのため、2回に分けて熱をかけている状態です。
他の作品もプレス中ですが、サイズの違いは歴然としていますね。
最後に額に入れて完成します。このフレーム、とっても気に入っています。写真のイメージに合わせた窓枠が見えると思いますが、これも自らが専用のカッターを使って作成しているものです。このサイズのマットカットはさすがに緊張しますが、出来上がったときの満足度も高くなります。
8×10インチのネガからプリントされた画像は、これだけ引き伸ばされても粒子が目視できません。非常にきめ細かいディテールと銀が作り出す深い黒から美しい白までのグラデーションはやはり特別な気がします。
実際に会場で実感していただけると嬉しいです。
林直個展『きおくの記録』はギャラリーDen mym にて、2020年9月26日まで開催中です。詳細と写真入りで作成した会場までアクセスは以下のページをご覧ください。皆さまのお越しをお待ちしております。
山道を奥のほうに進むため、不安になる方もおられると思います。ぜひ、この説明をご参照いただければと思います。よろしくお願いいたします。