こんにちは。店主の林直です。
少し前のことになりますが、一件のお問い合わせがあり、白黒フィルムで昔ながらの記念写真撮影をご依頼いただきました。今日はモノクロプリントの制作工程を少しご紹介しますね。
インターネットで検索したら東京の写真屋さんと当店が見つかったそうで、近いほうにと和歌山県からお越しになりました。撮影当日、お望みの写真のイメージを確認するためにおふたりとお話しし、さらには私の作品集もご覧いただくと、「望んでいたものとピッタリ」と言っていただけたので、いざ撮影することにしました。
白黒フィルムでの撮影は、暗室にてフィルム現像を終えたあと、ネガフィルムに透過光を当てて印画紙にプリントします。引伸機にネガフィルムをセットして、プリントするサイズとピントをしっかり合わせ、的確な露光量をテストしてから本番のプリントをします。
私が暗室でフィルム現像やプリントをし始めたのは写真学科に入学したときが最初で、かれこれ37年もの歳月が流れましたが、つくづく暗室での作業が好きなんだなと思います。未だに飽きることがなく、楽しみながら制作できるのです。
露光量を変化させて、細やかな調子のコントロールを調整しながら、乾燥したときに納得のいくトーンになることを目指して何パターンかプリントします。
全ての処理を終えて、乾燥まで済ませるのに数日を要します。バライタ紙という印画紙は非常に高価で、そのあつかいは知識と経験を必要とする難しい紙です。手間ひまが掛かりますが、やはり完成したプリントのトーンを見ていると、この方法でしか得ることができないという満足感にひたることができます。
最後にスポッティングという修正処理をおこない、いよいよ台紙に貼りつけます。暗室での処理ももちろんですが、写真がお客様の一生の記念になるよう、美術館の勤務していた頃と同じ気持ちで最善を尽くすようにしています。
今回は昔ながらの銀塩モノクロ写真というリクエストでしたが、カラーでの撮影もご希望だったため、それぞれ撮影し、2種類の写真を仕上げてお納めしました。
お客様からいただいたアンケートからもご満足いただけたことが分かり、とても有り難い仕事をさせてもらえたと喜んでいます。
「どこかの国の教科書に載せてほしいくらい良かった」というコメントがとってもユニークで印象に残ります ♪
フィルムによるモノクロ写真での記念撮影もおすすめです。ご興味のある方はぜひどうぞ。