店主の林直です。5月に入りましたね。規制のために4月は有ったような無かったような、不思議な時間の流れ方をして、いきなり5月を迎えたような気分です。
さて、今日は私の体験談から、写真にまつわるお話を書きたいと思います。
上の2冊の本は京都国立近代美術館の写真作品目録です。片方は以前、このブログでも紹介したもので、大学時代に鑑賞に行った際、購入したもの。もう一冊は後に追加で収蔵された作品が載った改訂版です。
モノクロ写真のこと1この改訂版は、私が2006年から約6年半、美術館の収蔵庫で写真作品のチェックと整理を担当していたときに使っていたもので、検索しやすいようにインデックスを付けていました。この本に載っている1,025点を含め、約2,000点を超える写真作品とじっくり向き合った体験は、私の人生の中でも宝物のような貴重な時間でした。
単に数多くの作品に触れたというだけでも良い体験なのですが、ここに収蔵されているものは、写真を専門に学んだ経験がある方なら、世界写真史などで必ず出てくるような代表的な写真家の名作がずらりと揃っていて、それはもう夢のようなライナップです。
美術館の作品は、その美術館での展覧に加え、他館への貸し出しの機会も多く、写真作品はその度に専用の保管箱から出して、額装した上で使用します。私が勤務していた間も、おそらく3〜4,000点は額装したのではないかと思います。その他諸々の補修作業なども含めて、これらの作業と収蔵庫内での保管整理を進めると、週に2日ほどのペースで、6年を超える月日が流れました。
本当になかなか出来ない体験をたくさんさせていただいたのですが、中でも嬉しかったのは、収蔵作品を使った展示を何度となく任せてもらったことです。
これはそんな中の一風景です。
作品が小さくて見づらいと思いますが、カメラワークという写真雑誌(20世紀初頭)とその周辺の写真家を特集しました。
こちらはシカゴを中心に生まれたニュー・バウハウスという写真の動きを紹介したもの。ニュー・バウハウスはとてもユニークな作品群が多い集まりなので、ご興味ある方は調べてみてください。
京都国立近代美術館に収蔵されている写真作品は、ギルバート・コレクションという約1,000点を中心に構築されています。シカゴ在住だった写真コレクター、アーノルド・ギルバート氏の作品群を1987年に京セラが購入し、美術館に寄贈されたもので、関西ではこれほどの作品群のコレクションは珍しいです。
学生時代に私の写真熱に火を点けてくれたこのコレクションを、このような形で関わらせてもらうことができたのは、幸運としか言いようがありません。
写真の神様がくれたプレゼントに応えられるよう、これからも更に精進していきたいと思います。